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  •  原 羊遊斎 (はら ようゆうさい) 1769〜1845

    桜紅葉蒔絵重香合  
    (さくらもみじまきえじゅうこうごう)

     原羊遊斎作

     製作年代 :
    江戸時代後期
    天保年間(circa.1830)頃

     法量 :
    縦56mm×横56mm×高64mm

     鑑賞 :
    小ぶりな重香合です。全体に桜と紅葉を散らし、愛玩品というにふさわしい作品です。 酒井抱一・鈴木其一のパトロンであった蝋燭油問屋・松澤孫八家の伝来品です。

     意匠 :
    全体に抱一風の桜の花と花弁、紅葉の葉を散らしています。 側面は、それぞれの面で構図や蒔き暈しの箇所を変えていますが、 どこに合わせても模様が連続するようになっています。

     形状 :
    正方形、3段の印籠蓋造で、角を唐戸面としています。底には低い脚が付いています。

     技法 :
    ・極めて薄い素地を組んで作られています。 総体黒蝋色塗地とし、平蒔絵で、桜は銀粉、紅葉は焼金に青金の蒔き暈しで朱を交えています。 付描は焼金です。
    ・段内部も黒蝋色塗で、釦を金地にしています。
    ・底面は淡梨子地に仕上げられています。

     作銘 :
    蓋裏右側に「羊遊斎」の蒔絵銘があります。

     外箱 :
    桐製、桟蓋造の外箱に収めららています。

     伝来 :
    松澤家は江戸日本橋本石町にあった油問屋の大坂屋孫八という豪商で、 酒井抱一、鈴木其一のパトロンでした。『光琳百図』所載の光琳作品や抱一、其一の作品を多数所持し、 近年、「夏秋渓流図屏風」(根津美術館蔵)や「朝顔図屏風」(メトロポリタン美術館蔵)の旧蔵者としても 注目されています。酒井抱一の書状幅が附属する「椿蒔絵棗」(泉屋博古館東京蔵)や 羊遊斎所持の「抱一花御堂誕生仏」、抱一下絵羊遊斎作の「吸物膳」等も所蔵していたので、 羊遊斎とも直接の関係があったようです。

     展観履歴 :
    2021 国立能楽堂資料展示室「日本人と自然 能楽と日本美術」
    2023 MIHO MUSEUM「蒔絵百花繚乱」展


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    全体写真

    芦鶴蒔絵印籠
    (あしにつるまきえいんろう)

     原羊遊斎作 

     製作年代 :
     江戸時代後期
    天保後期頃(circa.1840)

     法量 :
    縦85mm×横55mm×厚19mm

     鑑賞 :
    原羊遊斎工房で作られた印籠で、芦に鶴を表しています。 ボストン美術館所蔵の印籠下絵集に下絵があります。
     茶金石の緒締と、根付には河野春明作の「田毎の月」図の鏡蓋根付が取り合わせられています。

     意匠 :
    原羊遊斎工房で作られた印籠で、波に芦を背景に、舞い降りる1羽の鶴と 岸に立つ2羽の鶴を表しています。 ボストン美術館所蔵の原羊遊斎「印籠下絵集」に下絵がありますが、雲を描かなかったり、 芦の配置を変更したりしています。また同じ舞い降りる鶴と下に春草を描いた羊遊斎の印籠も現存しています。

     形状 :
    常形、4段の印籠です。 この寸法の印籠は他にも見られ、いずれも天保年間に制作されたものです。 同じ印籠下地を大量に作らせ、 注文に応じてモチーフを変えて工房で制作していったことが察せられます。

     技法 :
    ・上方を金粉溜地にして波と土坡を研出蒔絵で表しています。下方は金平目地の蒔き暈しとしています。
    ・芦と鶴は高蒔絵で、表しています。鶴の羽根は、うあいで1枚ずつ立体的に形作られています。
    ・段内部は鹿子梨子地ですが、梨子地粉と平目粉の大きさを揃えた珍しい鹿子梨子地です。 釦は金地になっています。

     作銘 : 銘写真
    底部の左下に「羊遊斎」と小さな字で蒔絵銘が入れられています。 こうした小さな字の銘は、細川家伝来で永青文庫所蔵の2点の羊遊斎の印籠、 雪華文蒔絵印籠と紫陽花蒔絵象嵌印籠にも見ることができます。 おそらく工房の工人の筆になるものでしょう。

     伝来 :
    1970年にヨーロッパで確認され、 2002年にケルンで再度出現し、日本に里帰りしました。本邦初公開です。

    根付写真 根付銘写真  根付 :
    根付は河野春明作「田毎の月図」の鏡蓋根付です。 朧銀地に銀の高彫象嵌で月を、芦は金の高彫象嵌です。 田に映る月は銀の平象嵌です。蓋裏に「春明法眼(花押)」の片切彫銘があります。

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    2005年11月12日UP
    2025年10月25日展示替