長野 横笛 (ながの おうてき) 生没年未詳
松竹梅蒔絵硯蓋 (しょうちくばいまきえすずりぶた)
長野横笛作
製作年代 : 江戸時代後期
文化・文政頃(circ.1820)
法量 :
縦439mm×横282mm×厚29mm
鑑賞 :
「歳寒三友」とも呼ばれる
吉祥文の松竹梅を高蒔絵とした硯蓋で、ハレの場に相応しい飲食具です。
在銘共箱とした極めて珍しい作品です。
意匠 :
「松竹梅」は中国の「歳寒三友」の考えを取り入れた組み合わせで、
冬に緑色を保つ松と竹、花を開く梅をあわせて吉祥文としています。
この作品では松は松葉、竹は竹の葉、梅は梅の花で表わしています。
形状 :
長方形で隅切とし、縁に垂直な低い立ち上がりが付いた硯蓋です。
硯蓋は食膳具の一種です。
技法 :
地は黒漆の塗立てです。蒔絵は焼金粉と青金粉と、
たった2種類の金粉を平蒔絵と高蒔絵で使い分け、
付描で表わしただけの技法ですが、
実に表情豊かに、豪華に表現できています。
底裏も黒漆の塗立てです。
作銘 :
底裏面左下に「長野横笛造(花押)」と黒漆と朱漆書の作銘があります。京都では道具類に作銘を入れる
習慣が定着せず、
箱に署名や黒印を入れる程度でした。
横笛の作品も大部分がそうで、
作銘が入っているのは数点に過ぎません。
中でも
「吉祥文染付埋物印籠」(旧ランガム・コレクション)は、
四明居、三井高英(1767−1847)好みの作品で、
この「松竹梅蒔絵硯蓋」の花押と共通しています。
また外箱の黒文方形印は、文化2年の蒔絵銘がある「鳥獣唐草蒟醤茶器」(個人蔵)の
印文と共通しています。このことから、これらは文化・文政頃の
長野横笛の作品と考えられます。
外箱 :
桟蓋造の桐製外箱で、蓋裏左下に「長野横笛」の黒文方形印があります。
この印は、文化2年の蒔絵銘がある「鳥獣唐草蒟醤茶器」(個人蔵)等、
比較的上等な作品群に共通してみられるものです。
また「金蒔絵/硯蓋/一個」・「横笛塗/すずり蓋/松竹梅の絵」
と2枚の貼札があります。
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2007年12月30日UP 2019年12月24日更新
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