塩見 政誠 (しおみ まさなり) 1647?〜1723?
漁夫蒔絵印籠 (ぎょふまきえいんろう)
塩見政誠作
製作年代 : 江戸時代中期
宝永〜享保頃(circa1710)
法量 :
縦77mm×横68mm×厚25mm
鑑賞 :
京都の伝説的な研出蒔絵の名工、塩見政誠作の印籠です。
繊細な研出蒔絵の特徴がよく表れた作品で、法隆寺献納宝物の「蜻蛉蟷螂蒔絵印籠」(東京国立博物館蔵)に近い印銘がみられます。
琥珀の緒締に、盛良作「若芦彫鏡蓋根付」が取り合わされています。
意匠 :
芦が茂る川で、網や素手で魚を捕る漁夫が躍動的に描かれています。
人物の絵画表現が実に見事です。
メトロポリタン美術館所蔵「曳舟蒔絵印籠」と画風・作風が極めて似ています。
形状 :
昔形4段で天地を平にした京印籠独特の形状です。
技法 :
・黒蝋色塗池に焼金粉、青金粉、銀粉を使った研出蒔絵、研切蒔絵で繊細緻密に表しています。
特に漁夫の人物表現は見事で、着衣には青漆や弁柄漆などの色漆も用い、
その細密な描写には超人的な技術がみられます。
・段内部は黒蝋色塗で、釦を金地にしています。
最下段にはドロリとした飴状の薬が残っており、薬入れとして実用に使われていたことが分かります。
作銘 :
右下紐通近くに「政誠」との朱文瓢形印が朱漆で入れられています。
ほとんどの塩見政誠の作品では紐通付近に「鹽見政誠」と朱漆で印形の銘が入れられます。
しかしこの銘はそれではなく、東京国立博物館の所蔵で法隆寺献納宝物だった
「蜻蛉蟷螂蒔絵印籠」の蓋裏にある「行年七十五翁鹽見政誠畫」に添えられた
「政誠」印に近いものです。
伝来 :
2015年に国内でうぶで発見されました。
展観履歴 :
2019 東京富士美術館「サムライ・ダンディズム」展
2023 MIHO MUSEUM「蒔絵百花繚乱」展
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蝶蒔絵印籠 (ちょうまきえいんろう)
塩見政誠作
製作年代 : 江戸時代中期
享保4年(1719)?
法量 :
縦71mm×横57mm×厚23mm
鑑賞 :
塩見政誠晩年の傑作です。
珍しい青貝を使った高蒔絵の作品で、独特な筆跡の行年銘と二字印が入っています。
珊瑚珠の緒締に、菜花蒔絵蝶象嵌鏡蓋根付が取り合わされています。
意匠 :
両面
と天・地にいわゆる浮線蝶文を散らしています。いくつかは横から見た蝶文です。
蝶の配置、空間の空け方が絶妙です。
形状 :
昔形4段で天地を平にした京印籠独特の形状です。
技法 :
・金平目地に高蒔絵で、浮線蝶を表しています。
蝶の羽根の模様には、絵梨子地や夜光貝があしらわれています。
極めて上質の金粉を使用した高度な高蒔絵となっています。
・段内部は黒蝋色塗で、釦は金地です。
作銘 :
蓋裏に「行年七十三翁塩見政誠畫之」と蒔絵銘があり、
「政誠」の朱文方形印が朱漆で入れられています。
同様の筆跡は基準作品にも多く見られます。行年銘は、これまで71歳から76歳まで11点が確認されており、
本作は新たに確認された12点目の作品で、貴重な基準作品となります。
伝来 :
2019年に徳島県内でうぶで発見されました。
京都の興正寺に伝来した「灑金蝶描金四重印籠 鷹司政通公遺留塩見政誠作」に該当する可能性があります。
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2017年8月11日UP
2023年7月15日更新
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