中山 胡民 (なかやま こみん) ? 〜1870
若竹蒔絵印籠
(わかたけまきえいんろう)
中山胡民作
製作年代 : 江戸時代末期
嘉永〜安政頃( 1850〜60)
法量 :
縦86mm×横47mm×厚27mm
鑑賞 :
中山胡民による繊細緻密な印籠です。岩に若竹が緻密な研出蒔絵、高蒔絵で表されています。
緒締には瑪瑙珠、根付は鶴蒔絵箱根付が取り合わされ、「竹に鶴」の意としています。
意匠 :
勢いよく伸びる若竹を意匠とした印籠です。
中山胡民作「竹林蒔絵印籠」は東京国立博物館をはじめ、静嘉堂文庫美術館、
スイスのバウアーコレクション等にも所蔵されています。
これらは表には岩に竹林、裏には若竹の竹林が描かれています。
この印籠は両面ともに岩に若竹とし、根元には筍が生えています。
形状 :
格調高い江戸形5段、紐通付きの印籠です。
技法 :
・黒蝋色塗平目地に、研出蒔絵と高蒔絵で表しています。
若竹は、地に焼金と青金の研出蒔絵で表した上に、
焼金の高蒔絵で表して、遠近感を表現しています。
岩は高蒔絵で立体的に表し、焼金粉に青金粉を蒔きぼかし、金の切金を主として、
銀の切金もところどころに置いています。
・段内部は金梨子地です。
作銘 :
底部左下に極めて小さな字で、「法橋胡民作」と蒔絵銘があります。
伝来 :
国内にうぶで伝来し、2016年に出現しました。絹の印籠袋が附属し、傷一つない状態で伝えられた名品です。
銘文と意匠が同じであることから、門人の小川松民が所蔵していて第一回観古美術会に出品した印籠に該当する可能性があります。
↑先頭に戻る
作者について知る⇒
蓬莱山鶴亀蒔絵印籠
(ほうらいさんつるかめまきえいんろう)
中山胡民作
製作年代 :
江戸時代末期
嘉永〜安政頃(1850〜60)
法量 :
縦75mm×横48mm×厚17mm
鑑賞 :
中山胡民による豪華な金地高蒔絵の印籠です。琳派風の蓬莱山に鶴亀が、緻密な研出蒔絵、高蒔絵で表されています。
緒締には珊瑚珠、根付は象牙梅彫鏡蓋根付が取り合わされています。
意匠 :
表裏に蓬莱山を配し、表には舞い降りる鶴、裏には海中から岩に登る亀を描いています。
蓬莱山は中国の神仙思想上の仙境ですが、この印籠では琳派風の和様の松が描かれ、
『光琳百図』にも採録される「松島図屏風」に着想したと考えられます。
元は俵屋宗達筆「松島図屏風」(フリーア美術館蔵)がオリジナルであり、
河野元昭氏は宗達が能[高砂]から着想を得て描いたと唱えられています。
本作でも鶴・亀が描かれて高砂の留守模様と考えられ、
松島図=能[高砂]という考え方は、幕末まで琳派に受け継がれていたのではないかと考えられます。
形状 :
常形4段、紐通付きのやや小ぶりな印籠です。
技法 :
・金粉溜地に焼金や青金の平目粉を研出蒔絵として雲や霞を表しているところがみどころです。
蓬莱山と波、鶴と亀は高蒔絵で表現しています。蓬莱山の岩には平目粉だけでなく、青貝微塵粉もわずかに蒔かれています。
・段内部は金平目地です。
作銘 :
底部左下に、大ぶりな字で「法橋胡民(花押)」と蒔絵銘があります。
伝来 :
大正6年(1917)11月12日に東京美術倶楽部で行われた
「舊御大名家某大家御所蔵品故富岡男爵故前田香雪君御遺愛品入札」に、
一六〇「胡民作粉溜鶴亀蒔繪印籠」として出品されているのが初出です。
この売立は二本松藩主丹羽家や好古家として知られる前田香雪等の
所蔵品をまとめた売立ですが、印籠類の旧蔵者は不明です。
その後、1989年に天満屋広島店で開催された「第二回金蒔絵工芸逸品選」に出品されていた
印籠15本入の印籠箪笥の中にこの印籠が含まれています。
それから27年間、一度も世に出ることはありませんでしたが、
2016年11月10日にBONAHMS社が、広島のコレクター、故杉原昭三氏(1928〜2014)
所蔵の美術品を
「杉原昭三氏コレクション」としてロンドンでオークションにかけ、
上記の印籠箪笥と内容品もバラ売りにして
Lot147として出品されています。この印籠は2017年に再び国内に戻りました。
|
2006年 5月 1日UP |
2023年 2月18日展示替 |