幸阿弥 忠光 (こうあみ ただみつ) 生没年未詳
獅子蒔絵平文螺鈿印籠 (ししまきえひょうもんらでんいんろう)
幸阿弥忠光作
製作年代 :
江戸時代中期
安永〜天明頃
法量 :
縦82mm×横82mm×厚20mm
鑑賞 :
幸阿弥忠光は経歴不明ですが、18世紀後半の印籠蒔絵師です。
幸阿弥姓を名乗っていますが、おそらく門人筋でしょう。
狩野風の獅子を表していますが、図様も技法も、表裏でまったく対象的で、躍動的な表面に対し、静かな
裏面、金平文の表面に対し、螺鈿の裏面になっています。
緒締には瑪瑙、根付は後藤光美作「牡丹蝶鏡蓋根付」が取り合わされ、石橋の意となっています。
意匠 :
狩野風の獅子図で、表は躍動的な奔る獅子、裏は静かにうずくまる獅子です。
墨絵のような草体で表し、太い骨書き、ぼかしによる渦毛、髭と3種類を組み合わせて表現しています。
うずくまる獅子の図は、山田常嘉や飯塚桃葉の作品に類似の図がしばしば見られます。その内、
初代飯塚桃葉作「獅子蒔絵印籠」(静嘉堂文庫美術館蔵)には狩野尚信(1607-1750)の下絵銘があり、
また山田常嘉の下絵集にも同様の下絵があり、粉本が流布していたと考えられます。
形状 :
大振りな常形3段の印籠です。幸阿弥忠光の印籠の多くにこの形状がみられます。
技法 :
・黒蝋色塗地に、表は平文と研出蒔絵で奔る獅子を、
裏面は螺鈿と研出蒔絵でうずくまる獅子を表しています。原初の研出蒔絵、末金鏤に近い手法がとられています。
・段内部は朱漆塗で、立上りは金粉溜地に仕立てられています。
作銘 :
底部左下に「幸阿弥忠光作」と蒔絵銘があります。
伝来 :
2017年に国内で発見されました。
展観履歴 :
2019 東京富士美術館「サムライ・ダンディズム」展
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