石井 有得斎 初代 (いしい うとくさい) ? 〜1862
釣狐蒔絵印籠(つりぎつねまきえいんろう)
石井有得斎(初代)作
製作年代 : 江戸時代末期
嘉永〜文久頃
(1850〜60)
法量 :
縦55mm×横42mm×厚16mm
鑑賞 :
古満派の印籠蒔絵師・初代石井有得斎が製作したかなり小ぶりな印籠です。
石目金地に高蒔絵と狐面を彫嵌し、狂言<釣狐>の舞台上の様子を表しています。
緒締は七宝、根付は菊象牙彫根付です。
意匠 :
狂言<釣狐>の後シテの舞台上の様子を表しています。
<釣狐>では、全身を狐の着ぐるみに手袋と足袋を着け、
狐の狂言面を掛け、狐の罠に近づきます。
現在では作リ物の罠に鳴子は付きませんが、幕末には鳴子を付けていたことが、
当時の能楽絵画資料や
初代・古満寛哉作「釣狐蒔絵印籠」(徳川美術館蔵)と
2代・古満寛哉作「釣狐蒔絵印籠」(個人蔵)から分かっています。
この印籠では罠そのものに鳴子が付いており、当時でも様々な作リ物の形状と演出があったことが分かります。
また有得斎による<釣狐>の前シテを表した木地蒔絵による「伯蔵主秋草蒔絵印籠」(クレス・コレクション)も現存しています。
形状 :
常形2段紐通付の非常に小さな印籠です。
技法 :
・石目金地に梨子地粉を打ち込んでいます。地の仕立ては2点の古満寛哉作「釣狐蒔絵印籠」と近く、
有得斎はどちらかを見せられて注文を受けた可能性もあります。
・<釣狐>のシテは高蒔絵とし、狐面は骨を容彫して象嵌しています。
2点の古満寛哉作「釣狐蒔絵印籠」の狐面が染象牙で代赭色であるのに対し、骨製で白さが際立つのは、
〔白狐〕・〔白式〕などの小書による白狐の特殊演出に用いた白彩色の狐面を表していると考えられます。
裏面の罠は高蒔絵で、鳴子の板は上研出で木目を表しています。
・段内部は刑部梨子地で、釦は金地です。
作銘 :
印籠の底部に右下に「有得斎(花押)」の蒔絵銘があります。
伝来 :
日本国内に伝来して2014年に出現し、印籠756点を有する東京のコレクターが所有し、
2019年に再出現しました。
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