小川 松民 (おがわ しょうみん) 1847〜1891
片輪車蒔絵螺鈿香箱 (かたわぐるままきえらでんこうばこ)
小川松民作
製作年代 : 明治時代前期 明治15年(1882)頃
法量 :
縦111mm×横86mm×高47mm
鑑賞 :
旧松江藩主松平家に伝来していた、
「片輪車蒔絵螺鈿手箱」の意匠を、小さな香箱に翻案した作品です。
豪華な鹿子金地に螺鈿で片輪車を配置し、
付描で波模様を描き詰めています。
内部も手箱の蓋裏の意匠に取材した巴文を研出蒔絵で散らしています。
羊遊斎派正系で、古器模造を得意としていた小川松民ならではの典型的な作品です。
意匠 :
片輪車は平安時代から見られる意匠です。牛車の車輪が乾燥して割れないよう、
加茂川の流れに浸したことに起源すると云われています。
特にこの作品では、鎌倉時代の作品、「片輪車蒔絵螺鈿手箱」
の意匠を小さな香箱に写したもので、羊遊斎派の伝統的な意匠でもあり、
師の中山胡民も、さらにその師の原羊遊斎も棗や印籠を作っています。
内側の巴模様も、「片輪車蒔絵螺鈿手箱」箱の内側に描かれていた模様で、
この作品では、立上りや、底にまで同じ模様が描かれています。
形状 :
長方形角丸の印籠蓋造です。原品の手箱は置口に錫覆輪が廻されていますが、
本作品では玉縁を設けています。
片輪車手箱 :
片輪車手箱とは、北条政子が所持していたと伝えられる鎌倉時代の手箱で、
茶人大名で松江藩主の松平不昧が、
藤原佐理筆「離洛帖」とともに700両で購入した作品です。
原羊遊斎はこの手箱の修復をしたと伝えられ、片輪車を意匠とした棗や
印籠
などをいくつも残しています。師の中山胡民も同様な棗や香合を作っています。
小川松民は、明治15年(1882)に博物局に依頼され、
松平不昧以来伝わり、松平直亮伯爵家で所蔵されていたこの手箱の模造を行っています。
手箱の原品は、その後、東京美術倶楽部で売却され、現在は東京国立博物館に所蔵され、
「片輪車螺鈿手箱」
として国宝に指定されています。
技法 :
金粉溜地に先平目粉を打ち込んだ豪華な鹿子金地となっています。
青貝螺鈿で片輪車を象嵌し、焼金粉と青金粉で車輪を高蒔絵にしています。
そして焼金の付描で波模様を描き詰めています。
箱内部、立上がり、底は、黒蝋色塗金平目地に巴模様を研出蒔絵にしています。
この巴模様も原品の片輪車蒔絵螺鈿手箱の意匠に取材しています。
作銘 :
蓋裏左下に「模古/晋々枩民」の蒔絵銘があります。
伝来 :
状態から見て、国内にあったようです。2011年に一度見た記憶があります。
今回が初公開です。
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