長谷川 巨鱗斎 (はせがわ こりんさい) 生没年未詳
秋景山水蒔絵印籠 (しゅうけいさんすいまきえいんろう)
長谷川巨鱗斎作
製作年代 : 江戸時代後期
文政頃(circ.1810)
法量 :
縦54mm×横47mm×厚20mm
鑑賞 :
山田常嘉の一門で、将軍家の御用も勤めていたとみられる長谷川巨鱗斎の印籠です。
黒蒔絵で秋景の唐山水図を表しています。
緒締は桃色珊瑚、根付は金魚々子地の唐子鏡蓋根付で、台は常川斎作で玩具蒔絵になっています。
意匠 :
この工人としては珍しい唐山水図です。表面の意匠が橘守國の挿絵による『絵本通宝誌』巻9の「秋之景」の図を用いたことは明らかでしょう。
特徴的な水上の楼閣に唐風の旗が見え、落雁を描いています。
裏面には長橋に港を表しています。裏面は巨鱗斎の創作と考えられます。
形状 :
・常形4段で、隠し紐通とした小ぶりな印籠です。
・天地を平らにし、角と側面に唐戸面を取っています。
特に側面に唐戸面を取るのは、かなり珍しいもので、特殊な形状です。
・各段内部の立上りが低いのも珍しいことです。
技法 :
潤塗地に非常に繊細な黒漆による黒蒔絵としています。この工人としてば珍しいものですが、
東京富士美術館所蔵の「稲束雀蒔絵印籠」
がほとんど同技法の作例として挙げられます。地と上絵の色を変えることによってコントラストを付けた黒蒔絵です。
・角は唐戸面に取って、金粉溜地にしています。
・段の内部は黒蝋色塗で、釦を金地にしています。
作銘 :
底部左下に「長谷川重美作」の蒔絵銘があります。
伝来 :
2021年に名古屋で出現しました。地味な印籠ですが非常に人気があったらしく、
ジャス・コレクションほか、ほとんど同じ印籠が他に4例も確認できますが、裏面の図様に違いがあります。
作銘はいずれも同じです。
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