古満 休伯 (こま きゅうはく) ? 〜1794
貝合蒔絵印籠 (かいあわせまきえいんろう)
古満休伯作
製作年代 : 江戸時代中期
宝暦12年(1762) 〜寛政6年(1794)頃
法量 :
縦78mm×横64mm×厚20mm
鑑賞 :
貝合せ一組の表裏を高蒔絵で表した印籠です。古格があり、『漆器図録』に掲載されており、明治以来名品として知られた作品です。
緒締は珊瑚珠、根付は「貝合蒔絵根付」が取り合わされています。
意匠 :
貝合せの貝一組を意匠としています。
貝合せは平安時代に始まる遊戯具で、対の貝にしか合わないことから、
貞操の象徴として婚礼道具として近世まで用いられました。
この印籠では、貝の内側の意匠は若松で、『源氏物語』の「初音」の小松引きを表しています。
形状 :
やや平たい昔形三段の印籠です。
技法 :
・黒蝋色塗地に貝合を
高蒔絵で表しています。
・表は貝の内側を表し、金雲に若松を付描で緻密に描いています。
雲には金・銀の平文を貼っています。
裏は貝の外側を表し、銀粉溜地に潤研切蒔絵として、貝の縁は四分一粉溜としています。
・印籠内部は潤塗で、釦を金地にしています。
作銘 :
古満派の掟通り、底部右下に「古満休伯作」銘があり、沈金彫銘になっています。
沈金彫銘は擦れて消えることがないため、作銘としては合理的な方法です。
5代古満休伯の作品では、しばしば見受けられます。
伝来 :
明治時代の漆工家、梶芳蔵の旧蔵品です。
柴田令哉の遺著『漆器図録』(1916年)や、
飯島虚心著『蒔絵師傳』に模写図が掲載され、
国内では古くから名品として認識されていました。
その後、アメリカのウィリアム.F.デュポン氏の秘蔵品になっていたため、
行方不明になっており、1996年にニューヨークのオークションに登場して約100年ぶりに発見しました。
梶芳蔵(1849〜1901) :
明治の蒔絵作家です。嘉永2年(1849)に生まれ、
植松抱民に師事しました。
名が芳蔵で、号が豊動です。
日本漆工会発起人の一人で商議員となっています。明治34年(1901)
「鮎蒔絵文台・硯箱」が第五次漆工競技会で金賞となりましたが、その年に没しました。
所載履歴 :
・柴田令哉遺著『漆器図録』1916
・飯島虚心著「蒔絵師傳」早稲田大学本
展観履歴 :
2019 東京富士美術館「サムライ・ダンディズム」展
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兎蒔絵印籠 (うさぎまきえいんろう)
古満休伯作
製作年代 : 江戸時代中期
宝暦12年(1762) 〜寛政6年(1794)頃
法量 :
縦83mm×横73mm×厚13mm
鑑賞 :
真っ赤な朱蝋色塗地に兎二羽を高蒔絵で表した印籠です。
緒締は水晶玉、根付には作「象牙地兎彫根付」が取り合わされています。
意匠 :
土坡に兎二羽を大写しで表した意匠としています。裏面は土坡の続きだけで、大胆にも余白にしています。
形状 :
大ぶりで平たい常形4段の印籠です。
技法 :
・朱蝋色塗地に高蒔絵で2羽の兎を大写しで薄肉の高蒔絵で表し、その肉取りが見事です。
1羽は銀粉で、1羽は焼金粉に青金粉で斑を研切蒔絵で表しており、肉合研出蒔絵
の応用になっています。また毛並みを毛彫りで表しているのも珍しいことです。
朱蝋色塗の印籠は、傷が付いた時に完全な修理が効かないため作品が少なく、
特に状態の良い印籠は少ない傾向にあります。
・土坡には細かい切金を規則正しく置き、下草を付描で表しています。
・印籠内部はも朱蝋色塗で、釦を金地にしています。
作銘 :
古満派の掟通り、底部右下に「古満休伯作」の蒔絵銘があります。
伝来 :
国内に伝来し、2021年に発見しました。
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2006年 9月 1日UP
2023年 1月23日更新
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