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  •  中大路 茂永 (なかおおじ もえい) 生没年未詳

    槙仏法僧蒔絵印籠
    (まきにぶっぽうそうまきえいんろう)

    中大路茂永作「槙仏法僧蒔絵印籠」

     中大路茂永作 中島来章下絵

     製作年代 : 江戸時代末期
    嘉永・安政頃(circ.1850)

     法量 :
    縦80mm×横58mm×厚22mm

     鑑賞 :
    京都の円山派の絵師・中島来章(1796〜1871) の下絵により、京都の印籠蒔絵師・中大路茂永が蒔絵をした印籠です。
     写生派絵師の下絵に研出蒔絵と高蒔絵を併用した幕末京都の印籠の特徴がよく表れた作品です。
     瑪瑙の緒締に、金工の松雀高彫鏡蓋根付が取り合わされています。

     意匠 :
    京都円山派の絵師・中島来章の下絵で「槙に仏法僧」を描いています。
     当時、「仏法僧」は「ブッポウソウ」と啼くと考えられていたのでこの名があります。 またそれにより「三宝鳥」とも呼ばれていました。
     全く同じ意匠で無銘の作品が静嘉堂文庫美術館にも収蔵されています。

     形状 :
    常形4段のやや大振りな印籠です。

     技法 :
    ・地は黒蝋色塗池の下方を、研出蒔絵で蒔き暈しながら金粉溜池にしています。 この表現方法は茂永がしばしば用いました。
     槙と仏法僧は高蒔絵で、槙の葉には部分的に青金粉も交えています。
    ・内部は金梨子地です。

     作銘 :
    底に中島来章の下絵銘「来章」に朱漆で「来章」の朱文方形印があり、 また茂永の蒔絵銘と「茂永」の朱文方形印があります。 茂永の作品で下絵銘がある作品は、確認されているものではこの1点のみです。  内部写真

     中島 来章(1796〜1871) :
    中島来章は渡辺南岳と円山応瑞に師事した幕末における円山派を代表する画家です。 横山清暉、塩川文麟、岸連山と共に平安四名家と称されました。

     伝来 :
    R・バーカーのコレクションで、長らくヨーロッパにありました。 1975年にロンドンで売却された記録があります。 1998年にニューヨークで再び出現し、日本に里帰りしました。

     茂永作 槙三暮鳥印籠 :
    2022年3月、宮内庁三の丸尚蔵館主任研究官・五味聖氏が「孝明天皇ゆかりの印籠について(二)」という論文を発表されました。 孝明天皇の御宸筆になる「印籠御留」(東山御文庫蔵 勅封 第172番-2-17)について翻刻・公開されたもので、光格天皇・仁孝天皇・孝明天皇の印籠収集がより具体的に判明しました。 その中の「伝来之部」に下記のように茂永作の印籠が3点があげられています。

       茂永
      寒菊狗子
      雪虎
      槇三暮鳥

    3つ目に挙げられた「槙に三暮鳥」は本作に該当する可能性があります。というのは 「三暮鳥(サンボチョウ)」という鳥が全く辞書にも登場しない謎の鳥で、 あるいはこれが仏法僧の異名である「三宝鳥(サンボウチョウ)」ではないかと思うのです。 そうであれば、年代的に本作は、仁孝天皇・孝明天皇の御物であった可能性があります。

     展観履歴 :
    2020 国立能楽堂資料展示室「日本人と自然 能楽と日本美術」
    2023 MIHO MUSEUM「蒔絵百花繚乱」展

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    2008年12月 7日UP
    2023年 7月15日更新