古満 巨柳 (こま こりゅう) ? 〜1796
菊蒔絵提重 (きくまきえさげじゅう)
古満巨柳作
製作年代 : 江戸時代中期
安永(1772)〜寛政6年(1794)頃
法量 :
縦183mm×横198mm×高332mm
鑑賞 :
美しい木目を見せた桑製の枠に、格調高い喰籠形の重箱を納めています。重箱と四方盆は菊花の研出蒔絵です。
様々な姿を見せる菊花文と、金属粉の種類と密度の違いだけで、単調にならずに品よく配しています。
意匠 :
重箱と盆には、様々な姿を見せる菊花を調子よく全体に散らしています。
熊本藩筆頭家老松井家伝来の巨柳作「竹蒔絵提重(松井文庫蔵)」
の中に収められる盆や「菊蒔絵提重」(相州安田家売立目録)と意匠・技法がよく似ています。枠の側面の透かしと、提手金具は七宝文です。
形状 :
提重の枠は桑製の玉杢の木地呂塗で上下に引き出しがあります。
側面には七宝文の透かしを入れ、提手は金銅製で飾金具はやはり七宝文です。
重箱は隅切の八角形4段の印籠蓋造で、唐物の喰籠のような格調高い形状としています。
この形の重箱は、同じく巨柳の作品で日本橋の紙商榛原家に伝来した
「菊蝶蒔絵提重」にも見ることができます。
下の引き出しには四方盆が納まります。
技法 :
・ 重箱と四方盆は黒蝋色塗地に研出蒔絵としています。
色漆といえば朱漆だけで、あとは焼金粉・青金粉・銀粉の三種類を蒔き分けただけで、
このような変化に富んだ色合いを見せているのです。
・ 重箱の内側は赤口の朱漆塗としています。
作銘 :
重箱には「古満巨柳作(花押)」、
四方盆には「古満巨柳作」と大字の蒔絵銘があります。
心ある蒔絵師は、このように2箇所以上に入れる場合、作銘のランクを変え、花押を加えたり、
別号を添えたりすることがあります。
字の大きさや筆跡は、基準作品となる福井藩主松平家伝来で狩野典信下絵「李白観瀑蒔絵箪笥」(福井市立郷土歴史博物館蔵)、佐賀藩主鍋島家伝来
「桐鳳凰蒔絵中央卓」(鍋島報效会徴古館蔵)
、
熊本藩筆頭家老松井家伝来「竹蒔絵提重」(松井文庫蔵)の3点と非常によく似ています。
伝来 :
伝来は不明です。
参考写真 :
相州安田家売立目録 紙商榛原家売立目録
展観履歴 :
2022 国立能楽堂資料展示室「秋の風 能楽と日本美術」
2023 MIHO MUSEUM「蒔絵百花繚乱」展
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雪中雁蒔絵印籠 (せっちゅうかりまきえいんろう)
古満巨柳作
製作年代 : 江戸時代中期
安永(1772)〜寛政6年(1794)頃
法量 :
縦70mm×横66mm×厚16mm
鑑賞 :
昭和9年(1934)まで大名家に伝来していたことが確実な古満巨柳の印籠です。
作銘を現在でも確認できるため、
貴重な基準作品となっています。雪中の雁を緻密な研出蒔絵で表しています。
青ガラスの緒締に、菊形銀容彫根付が取り合わされています。
意匠 :
雪が舞う中を飛ぶ雁を、表に2羽を、裏に1羽を配したすっきりとしたデザインです。
雪を不自然にならずに、うまく表現しています。
形状 :
昔形3段で、比較的大振りで、厚さが薄く、平形とも呼ばれる形状です。
技法 :
地塗は黒蝋色塗地に銀の大小不揃いの梨子地粉や平目粉を置いて、雪が舞ったかのように表現しています。
そこに地塗、地蒔を含めて、雁もすべて研出蒔絵で表わしています。雁の羽根等の細部は描割で
表現しています。
段内部は朱漆塗で、立上りと釦は金地になっています。
また蓋裏に「十二」と墨書があります。
作銘 :
古満派の印籠の掟通りに、底部右下に楷書で「古満巨柳作(花押)」と蒔絵銘があります。
伝来 :
昭和9年(1934)2月15日に東京美術倶楽部で行われた「山口・稲垣両子爵家御蔵品入札」に
見出すことができます。
「一七六 印籠〆拾點 梶川、巨満、羊遊齋、桃壽、嘉置、他」とある10
点の内の1点です。
左上に写真があります。
常陸牛久藩主・山口家、志摩鳥羽藩主・稲垣家もしくは近江山上藩主・稲垣家伝来品と考えられます。
緒締も当時のままで、紐もオリジナルのものは別置保存されています。
海外に流出した形跡はなく、70年以上行方不明でした。
展観履歴 :
2019 東京富士美術館「サムライ・ダンディズム」展
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2005年12月 1日UP
2023年 7月15日更新
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