田村 壽秀 (たむら としひで) 1757〜1833?
月秋草蒔絵印籠
(つきにあきくさまきえいんろう)
田村壽秀作
製作年代 :
江戸時代後期 文化14年(1817)
法量 :
縦80mm×横58mm×厚21mm
鑑賞 :
青金地高蒔絵の清楚で豪奢な印籠です。
仁孝天皇の注文とも考えられます。
トンボ玉の緒締と、鉄刀木に秋草鶉の金工を象嵌した饅頭根付が取り合わされています。
意匠 :
満月に風に吹かれる萩と桔梗の秋草を配しています。
形状 :
常形4段の印籠です。
技法 :
・地は青金粉溜地に平目粉を打ち込んだ鹿子金地としています。月は銀の研出蒔絵です。
秋草は高蒔絵で、萩の葉は高蒔絵の描割りとしています。桔梗の花は肉取りが上手く、蕊は付描きです。
・内部は叢梨子地です。
作銘 :
底に「文化丁丑冬/寿秀」と、朱漆で「東渓」の白文方形印があります。
光格天皇が黒地研出の作品を好んだのに対し、仁孝天皇は金地の作品を好んだようです。
仁孝天皇はこの年の秋、9月21日に即位されました。
ひときわ豪華で画題も秋草なので、即位を記念した制作とも思われます。
伝来 :
長らくヨーロッパにあり、1996年に日本に里帰りしました。
蓋裏に「甲/百四十」との貼札があります。
展観履歴 :
2020 国立能楽堂資料展示室「日本人と自然 能楽と日本美術」
2022 国立能楽堂資料展示室「秋の風 能楽と日本美術」
2023 MIHO MUSEUM「蒔絵百花繚乱」展
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土筆蒔絵棗(つくしまきえなつめ)
田村壽秀作 仁孝天皇御物
製作年代 : 江戸時代後期
文政頃(circ.1820)
法量 :
径67mm×高66mm
鑑賞 :
黒蝋色塗地に土筆を高蒔絵した中棗です。
仁孝天皇の御物で、天保元年(1830)に関白・鷹司政通(1789〜1868)
が拝領し、さらに天保4年(1833)に鷹司政通が実子の興正寺門跡・大教正摂信に譲った作品です。
皇室から下賜され、明治45年(1912)までの伝来が詳細に判明する
京都の漆工史上、極めて重要な作品です。
意匠 :
蓋甲と側面に土筆を配置した棗としては珍しい意匠です。
技法 :
黒蝋色塗地に高蒔絵で表現しています。
杉菜は青金で、胞子茎は焼金を描割りにして、洗い出しとしています。
内側は黒漆の真塗りです。
作銘 :
底の左に非常に小さく「寿秀(花押)」と蒔絵銘があります。
仕覆 :
網牡丹緞子の仕覆が附属しています。
内箱(共箱) :
共箱は四方桟蓋の桐箱で、表書は「土筆 棗」と書かれています。
見返しには「寿秀」の墨書と「壽秀」の白文長方形朱印があります。
また関白鷹司政通が拝領した際の書付が「主上御手賜之/天保元年十二月廿六日/関白(花押)」とあります。
つまり仁孝天皇が御自身の手で政通に直接賜わり、政通が自ら墨でその経緯を書き付けたのです。
「主上御手賜之」というところに、政通の感動の様子を窺うことができます。
外箱 :
3年後の天保4年(1833)、
鷹司政通はこの棗をさらに実子の興正寺門跡大教正摂信に譲りますが、
その際、さらに外箱が作られ二重箱とされました。
外箱は印籠蓋造の桐箱で、緑色の真田紐が付いています。
表書は「土筆棗」、見返しに「天保四年正月念六殿下賜之/権僧正摂信(花押)」とあり、
摂信が書き付けています。
書付 :
これらの経緯を記した書付も附属しています。
「記/天保元寅年十二月廿六日/仁孝天皇御直ニ/
鷹司関白従一位政通公ニ廿六日/廿六日
/賜/同四巳年正月興正寺門跡大教正摂信ヘ譲賜/子澤釈誌之/明治四十五年/永存大切互申候/六十一歳」
とあり、摂信からさらにその子、
澤釈に譲られ、明治45年(1912)に記録して添えたのでした。
伝来 :
仁孝天皇、鷹司政通、華園摂信、華園澤称と伝わりました。つまり近代まで京都・興正寺門跡に伝来しています。
2006年に国内で出現しました。
仁孝天皇(1800〜1846) :
光格天皇の第六皇子で、
文化14年(1817)に即位した第120代天皇です。諡号を復興し、学習所の創設を計画されました。
弘化3年(1846)に崩御されました。
御日常に学問を奨励され、印籠を好まれ、近臣にも下賜されました。
鷹司政通(1789〜1868) :
五摂家の一つ、鷹司家の幕末の当主です。関白・鷹司政熙の長男に生まれ、
文政6年(1823)に関白に、天保13年(1842)には太政大臣に就任しました。
長年にわたり関白として、朝廷内で権力をふるいました。
安政3年(1856)には異例の太閤の称号を孝明天皇から贈られています。
はじめ開国論者でしたが、攘夷派となって幕府の怒りに触れ、
出家しました。
仁孝天皇の后繋子が政通の妹であるため、仁孝天皇の義兄にもあたります。
華園摂信(1808〜1877) :
鷹司政通の次男で、興正寺第27世の住職となりました。大僧都・法印・僧正・大教正をつとめました。
展観履歴 :
2020 国立能楽堂資料展示室「日本人と自然 能楽と日本美術」
2021 国立能楽堂資料展示室「日本人と自然 能楽と日本美術」
2023 MIHO MUSEUM「蒔絵百花繚乱」展
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2007年11月24日UP
2026年 1月 6日更新
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