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  • 柴田是真
    生誕二百年展
  •  柴田 是真  (しばた ぜしん) 1807〜1891

    籠秋草蒔絵菓子盆
    (かごあきくさまきえかしぼん)

     柴田是真作

     製作年代 :江戸時代後期
    天保3〜10年(1832〜9)

     法量 :
    直径205mm×高23mm

     鑑賞 :
    尾形乾山の画風を取り入れながら、吉祥の要素を加えるなど洒脱さを加えた意匠です。 柴田是真30歳前後の未だ漆工として有名になる以前の極めて稀少な作品ながら、 黒石目、赤銅粉、四分一粉高蒔絵など、後の是真が頻繁に使うアイディアが随所に 散りばめられた作品です。

     意匠 : 『乾山遺墨』「花籠図」
    尾形乾山筆「花籠図」(重要文化財・福岡市美術館蔵)に着想しています。 この絵は酒井抱一が文政6年(1832)頃に刊行した『乾山遺墨』に掲載されています。 是真の師、初代古満寛哉は『乾山遺墨』のモチーフから数点の蒔絵作品を製作しており、 若き日の柴田是真も参考にしたと考えらえます。 もともと3つの花籠に桔梗、女郎花、菊、薄が入っていたものを、1つの花籠に 薄、女郎花、菊を入れています。菊が写実的な表現であるのに、 薄と女郎花を吉祥文に翻案しています。薄の穂は写実から離れて熨斗を意図し、 女郎花には、丁子、七宝、分銅が描かれています。 宝尽しを忍ばせたり、薄の葉の先を太くデフォルメしたところも是真らしい描法です。

     形状 :
    低い高台が付いた、丸形の菓子盆です。

     技法 :
     木胎の挽物を膠下地として、2度ほど黒漆を塗っています。 是真がまだ無名に近い30前後の作品で、 木地・下塗は流通していた中級品を使ったのでしょう。 しかし意匠を凝らし、蒔絵の技法は様々な工夫をしています。
     まず目を引くのは、琳派を意識し、籠を荒らした鉛板を切透かして、 大胆に貼付けたところです。 鉛板を貼付けてから、際錆を行い、上塗をしています。 他にも初期作に琳派の翻案作品があることから、 琳派の模作、翻案は、若き日の是真の一つのテーマだったと考えられます。
     次に目に付くのは、女郎花と薄の葉を、変塗の黒石目塗で表現したことです。 しかも石黄を混ぜて、青銅塗に近い色合いになっています。 後の是真が頻繁に使う技法です。 薄の葉のかすれた付描も是真らしい手癖です。
     さらに熨斗のような形の薄の穂は、金・銀粉だけでなく、 四分一粉や赤銅粉の平蒔絵になっています。 そして、赤銅粉の蒔絵には切貝を、四分一粉の蒔絵には切金も置いています。 こうした表現も、後の是真作品によく見られます。  
     また立体的に盛り上げられた、籠の口の紐や、 菊の葉などにも、後の是真の作風がすでに表れています。

     作銘 :
    底面左下に「是真」の蒔絵銘があります。この筆跡は天保5年(1834)、是真が28歳の 時に、花屋光枝編『狂歌尋じゅう集』に描いた挿絵の落款と同じです。 この時期のみの落款で、画人として先に名をなしたため、 絵画には「群鶴図屏風」(ホノルル美術館蔵)など作例が少なからずありますが、 漆工品では「楽器蒔絵印籠」(メトロポリタン美術館)と 「光琳写梅蒔絵印籠」(ハリリ・コレクション)のみでした。 この作品が3例目となり、極めて稀少です。

     伝来 :
    外箱 伝来は不明です。2012年に都内でうぶの状態で発見されました。

     外箱 :
    粗末な材の桐製四方桟蓋の外箱が附属しています。 いまだ無名時代の作品であり、制作当時の外箱と考えられます。

     展観履歴 :
    2012 根津美術館「ZESHIN」展


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    烏鷺羽根蒔絵文箱
    (うろはねまきえふばこ)

     柴田是真作

     製作年代 :江戸時代末期
    安政〜文久頃(circ.1860)

     法量 :
    縦195mm×横43mm×高34mm

     鑑賞 :
    全体に丸みを帯びた被蓋造の文箱です。蓋の表に黒蒔絵の烏の羽根があり、 赤と黒と銀のコントラストが鮮やかです。 蓋を開けて、銀蒔絵の鷺の羽根を見て、はじめて鴉鷺合戦の寓意だと分かります。

     意匠 :
    蓋の甲には烏の羽根を一枚だけ表し、蓋見返しには鷺の羽根を1枚だけ表しています。 烏鷺図は漆工品、絵画とも、しばしば是真がテーマとした画題で、 鴉鷺合戦の寓意と考えられます。 空中から垂直に落ちる烏の羽根と、舞い落ちる鷺の羽根だけを表した、 一種の留守模様ともいえます。

     形状 :
    全体に丸みを帯びた被蓋造の文箱です。手掛りの部分を刳ってあり、 銀製の鐶が付き、紫の革緒で結ぶようになっています。

     技法 : 側面
    竹素地を春慶塗にしたように見えますが、木胎の刳物で、 総体を朱溜刷毛目研出塗としています。 蓋甲には、烏の羽根を黒蒔絵とし、羽根軸とその根本には銀粉をあしらっています。 この黒蒔絵は、銀粉を使った高上げを行い、最後に黒蝋色塗で仕上げています。 そして付描は黒漆と、銀蒔とがあります。
     蓋見返しの鷺の羽根は、銀高蒔絵に銀付描です。内側であったために銀粉が現在でも錆びていません。

     作銘 :
    身の底部左下に「是真」の片切彫銘があります。

     伝来 :
    作銘 日本美術協会創立五十周年記念故役員遺作展覧会図録 伝来は不明です。2012年に金沢からうぶの状態で発見されました。

     羽根蒔絵文箱 :
    是真は羽根蒔絵文箱を少なくとも、もう1点作っています。 右の図版も烏の羽根を縦に1つ黒蒔絵としていますが、 こちらの文箱は本物の竹で作られています。 そしてこちらの文箱は金工家の香川勝廣の愛蔵品だったものですが、 現所在は不明です。

     展観履歴 :
    2012 根津美術館「ZESHIN」展


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    2005年11月22日UP
    2018年 1月31日更新