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  •  一峯斎(いっぽうさい)生没年未詳 

    重陽節句蒔絵印籠
    (ちょうようのせっくまきえいんろう)

    一峯斎作 重陽節句蒔絵印籠  上野一峯斎典厚作

     製作年代 : 江戸時代後期
    文化頃(circa1810)

     法量 :
    縦92mm×横59mm×厚18mm

     鑑賞 :
    代々梶川家 の下職を勤めて一峯斎を号した家の宝暦〜文化頃の当主、上野一峯斎典厚による印籠の作品です。
     表には赤い実の山茱萸(さんしゅゆ)と菊を入れた茱萸袋を、 裏には三宝に載せた三組盃と菊の折枝、提銚子を配し、重陽の節句を表しています。
     瑪瑙玉の緒締と五楓作「菊蒔絵饅頭形根付」を取り合わせています。

     意匠 :
    五節句の内、今では馴染みの薄くなった「菊重ね」、 「菊の節句」とも云われる重陽の節句を意匠としています。 端午の節句には、菖蒲で作った薬玉を柱に掛け、 重陽の節句でそれを捨てて茱萸袋に掛け替えたといわれています。 この茱萸袋を表の意匠とし、 裏は酒器と菊の折枝であり、江戸時代の上級武家における重陽の節句の様子を如実に伝える意匠です。 盃には「壽」字があり、菊の折枝とともに菊壽ともなっています。
     またメトロポリタン美術館には同形状、同寸法の一峯斎作「七夕蒔絵印籠」が所蔵されており、 元は五節句の揃い印籠であった可能性があります。

     形状 :
    常形4段の大ぶりな印籠で、天地の甲はゆるく盛っています。

     技法 :
    黒蝋色塗金平目地で、上方は粗い平目粉を蒔いています。緻密な梶川風の高蒔絵で、 焼金粉と青金粉を蒔き分けています。山茱萸の実は朱の漆絵に銀粉を交え、小さい菊の花や、袋の房紐は 朱金としています。また一部の菊の花や、三重盃、提銚子には金金貝の極付としています。
     印籠段内部は金梨子地になっています。

     作銘 :
    底部右下に小字で「一峯斎作」と蒔絵銘があり、「光」の朱文壺形印が朱漆で書かれています。

     伝来 :
    国内に伝来し、2014年にうぶで発見されました。

     展観履歴 :
    2019 東京富士美術館「サムライ・ダンディズム」展



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    牡丹蒔絵印籠
    (ぼたんまきえいんろう)

     上野一峯斎典厚作

     製作年代 : 江戸時代後期
    文化頃(circa1810)

     法量 :
    縦87mm×横60mm×厚16mm

     鑑賞 :
    代々梶川家 の下職を勤めて一峯斎を号した家の宝暦〜文化頃の当主、上野一峯斎典厚による印籠の作品です。
     紅白の牡丹を研出蒔絵で表現しています。緻密で、蒔暈し、引掻きが見事な蒔絵です。
     緒締は瑪瑙、根付は横谷宗與作の獅子鏡蓋根付を取り合わせ、石橋の意としています。

     意匠 :
    紅白の牡丹を表裏に振分けた構図で、葉の裏返りなども見事に表現されています。

     形状 :
    常形4段の印籠で、天地の甲はゆるく盛っています。厚みが薄く、平形とも呼ばれています。

     技法 :
    地塗を玉梨子地とし、牡丹を総研出蒔絵としています。 赤い牡丹は芯に近い部分を朱金とし、白い牡丹は銀粉で芯に使い部分を青金で表しています。 葉は青金で葉先を焼金で蒔暈しています。 葉の葉脈、花弁の筋などの細い線を全て丹念な引掻きとています。 蒔暈しも巧妙で高度な研出蒔絵が駆使されています。
     印籠段内部は金梨子地です。

     作銘 : 印籠銘写真
    底部右下に小字で「一峯斎」と蒔絵銘があり、「典厚」の朱文方形印が朱漆で書かれています。

     伝来 :
    イギリスに渡っていたようで、1993年にサザビース・ロンドンで売却された履歴があります。

     展観履歴 :
    2009 国立能楽堂資料展示室「能の意匠」展
    2019 東京富士美術館「サムライ・ダンディズム」展

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    2015年5月6日UP
    2016年9月9日更新