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  •  徳川幕府 御細工所 (とくがわばくふ おさいくじょ)

    牡丹唐草葵紋蒔絵沈箱
    (ぼたんからくさあおいもんまきえじんばこ)

     製作年代 : 江戸時代末期

     法量 :
    縦152mm×横127mm×高120mm

     鑑賞 :
    徳川幕府の御細工所で製作されたもので、膨大な婚礼道具の中の1つです。 沈箱は婚礼調度の中でも最も重要な三棚の1つ、厨子棚の局の扉内に納めます。
     濃梨子地に牡丹唐草と三葵紋を高蒔絵し、中の掛子に6つの香箱が納まります。 箱の中には沈香を納めます。

     意匠 :
    婚礼調度にもっとも多く見られる牡丹唐草文に、徳川家の定紋、三葵紋を組み合わせています。 三葵紋は左巴23筋立です。 この時代の婚礼調度は唐草を主体に文様と家紋で構成されています。 つまり文様と家紋を変えるだけで、すぐに新しい調度をデザインして制作することができます。 文様としては例えば、松・竹・梅・桐・橘・菊といった吉祥文が選ばれます。
     箱の蓋を開けると、掛子には6つの小箱が収まっています。それぞれに「源氏物語」の中から 「箒木」・「花宴」・「葵」・「紅葉賀」・「桐壺」・「若紫」の6つの帖が描かれています。 ここには江戸時代初期からこの6つの帖を描くことが、慣わしになっていました。

     形状 :
    長方形、被蓋造で蓋甲は平らで角に面取りをし、蓋鬘には玉縁をとっています。 また長側面に鐶の金具が付きます。箱の身には深い掛子が掛かり、その中に6つの小箱が納まります。 これらも長方形被蓋造です。

     技法 :
    ・全体を濃梨子地にして、炭粉上による高蒔絵で表わしています。 蒔絵は焼金粉と青金粉の高蒔絵で、葉脈には、焼金粉で付描がなされています。 箱内部も濃梨子地で、底面は淡梨子地です。釦は金地です。
     金具は金鍍金の七々地に銀の葵紋の 透彫の金具を被せたものです。 このタイプの金具は御細工所の決まった形式で、 皇女和宮の桐唐草・三葵紋・五葉菊紋蒔絵の調度(徳川記念財団蔵・江戸東京博物館蔵) などにも見ることができます。

     御厨子御黒棚并御小道具絵図帳 :
    「御厨子御黒棚并御小道具絵図帳」は東京国立博物館に所蔵される史料で、 徳川御三卿の1つ、田安家三代、徳川斉匡(11代将軍家斉の異母弟)の3人の姫君、 ?姫(文政2年、伊予松山藩主松平家へ嫁す)、 純姫(弘化4年、筑後柳川藩主立花家へ嫁す)、 筆姫(嘉永2年、肥前佐賀藩主鍋島家へ嫁す)の婚礼調度に関する資料です。 ?姫の調度は、完成見取図も多数残り、梨子地に葵紋唐草蒔絵であったことがわかっています。 その沈箱の完成見取図を見ると、仕様だけでなく、 6つの小箱の図様までもがこの沈箱とほとんど同じです。 全体写真 他の大名家の婚礼調度では、6つの小箱のテーマは同じですが、 図様までは同じではありません。 徳川将軍家の婚礼調度製作は幕末期に相次いだため、 こうした部分まで同じ下絵を敷き写して使ったと考えられます。

     展観履歴 :
    2008 国立能楽堂資料展示室「源氏物語と能」展


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    2008年 8月25日UP