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  •  中山 胡民 (なかやま こみん) ? 〜1870

    松鶴蒔絵春日台
     (まつつるまきえかすがだい)

     中山胡民作

     製作年代 : 江戸時代末期

     法量 :
    縦229mm横229mm高107mm

     鑑賞 :
    春日大社で清めや祓いに使う米を載せた室町時代の散米盆を写した春日台です。 淡梨子地、松鶴高蒔絵としています。
     同趣のものが数点現存していますが、 本作は近代東京の蒔絵師、佐々木高保(1845-1929)の所蔵品でした。 柴田令哉遺著『漆器図録』に掲載されています。

     意匠 :
    原品は若松に鶴の意匠だったと考えられますが、松喰鶴にしたのは胡民の創作でしょう。

     形状 :
    いわゆる春日台です。天板は隅切にして低い縁を付けた折敷形で、 台も隅切になっており、四方に透かしを設けています。

     技法 :
    ・素地は桧の厚板を組んで、比較的頑丈に作られています。
    ・総体淡梨子地で、天板の縁から内側を朱漆塗の塗立としています。 透かしの小口も朱漆塗として、アクセントにしています。
     実用に供されて天板が傷んだものが多くありますが、本作は全く傷がなく、未使用だったようです。
    ・台の面取部を中心に若松に鶴を高蒔絵にしています。 粗く上質の焼金粉を研ぎ上げた丁寧な仕事です。

     外箱 :
    共箱は桐製桟蓋造です。蓋甲右上にある「春日台」の墨書は胡民の自筆です。 蓋見返には、珍しくかなり大きな字で「法橋胡民冩」の墨書と「法橋胡民」の黒文方形印があります。
     箱の署名のみで作銘はありません。胡民の作品では、在銘か共箱かどちらかであることが多く、 在銘で共箱となったものは少ない傾向にあります。

     類品 :
    松澤家売立 赤星家売立 同様な作品は3点以上が現存しています。在銘になったものもあります。
     有名なのは、赤星家の売立に出たものと、 梅蒔絵瓶子一対を添えた豪商松澤孫八家の売立に出品されたものです。 松澤家は江戸琳派のパトロンで、酒井抱一・鈴木其一・原羊遊斎・中山胡民等の作品を 多数所蔵しており、大正7年のこの売立では2,000円という金額を記録しました。


     伝来 :
    江戸期の伝来は不明ですが、明治後期には近代の蒔絵師、佐々木高保の所蔵品でした。「漆器図録」に展開模写図が掲載されています。
     2016年にうぶで約110年ぶりに発見された作品です。

     佐々木高保 :
    佐々木家は宇多源氏六角佐々木家の家系で、京都に出て蒔絵師となり、 代々伊勢屋を称して御所の御用品を調進していました。高保は3代目で、 明治4年(1871)に東京に移住して宮内省御用を勤め、 明治天皇の御車や皇后御手道具などを製作しています。 コロンブス万国博覧会・京都記念博覧会・パリ万国博覧会などに出品し、 明治35年(1902)には日本漆工会で御前製作をしました。




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    蓬莱山鶴亀蒔絵印籠 
    (ほうらいさんつるかめまきえいんろう)

     中山胡民作 

     製作年代 : 江戸時代末期
    嘉永〜安政頃(1850〜60)

     法量 :
    縦75mm×横48mm×厚17mm

     鑑賞 :
    中山胡民による豪華な金地高蒔絵の印籠です。琳派風の蓬莱山に鶴亀が、緻密な研出蒔絵、高蒔絵で表されています。
     緒締には珊瑚珠、根付は象牙梅彫鏡蓋根付が取り合わされています。

     意匠 :
    表裏に蓬莱山を配し、表には舞い降りる鶴、裏には海中から岩に登る亀を描いています。
     蓬莱山は琳派風の松が描かれ、『光琳百図』にも採録される「松島図屏風」に着想したと考えられます。 元は俵屋宗達筆「松島図屏風」(フリーア美術館蔵)がオリジナルであり、 河野元昭氏は宗達が能[高砂]から着想を得て描いたと唱えられています。 本作でも鶴・亀が描かれて高砂の留守模様と考えられ、 松島図=能[高砂]という考え方は、幕末まで琳派に受け継がれていたのではないかと考えられます。 

     形状 :
    常形4段、紐通付きのやや小ぶりな印籠です。

     技法 :
    ・金粉溜地に焼金や青金の平目粉を研出蒔絵として雲や霞を表しているところがみどころです。 蓬莱山と波、鶴と亀は高蒔絵で表現しています。蓬莱山の岩には平目粉だけでなく、青貝微塵粉もわずかに蒔かれています。
    ・段内部は金平目地です。

     作銘 :
    底部左下に、大ぶりな字で「法橋胡民(花押)」と蒔絵銘があります。

     伝来 :
    大正6年(1917)11月12日に東京美術倶楽部で行われた 「舊御大名家某大家御所蔵品故富岡男爵故前田香雪君御遺愛品入札」に、 一六〇「胡民作粉溜鶴亀蒔繪印籠」として出品されているのが初出です。 この売立は二本松藩主丹羽家や好古家として知られる前田香雪等の 所蔵品をまとめた売立ですが、印籠類の旧蔵者は不明です。
     その後、1989年に天満屋広島店で開催された「第二回金蒔絵工芸逸品選」に出品されていた 印籠15本入の印籠箪笥の中にこの印籠が含まれています。
     それから27年間、一度も世に出ることはありませんでしたが、 2016年11月10日にBONAHMS社が、広島のコレクター、故杉原昭三氏(1928〜2014) 所蔵の美術品を 「杉原昭三氏コレクション」としてロンドンでオークションにかけ、 上記の印籠箪笥と内容品もバラ売りにして Lot147として出品されています。この印籠は2017年に再び国内に戻りました。

     展観履歴 :
    2019 東京富士美術館「サムライ・ダンディズム」展





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    2006年 5月 1日UP
    2020年 1月 2日展示替