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  •  永田 友治 (ながた ゆうじ) 生没年未詳

    槙雀蒔絵螺鈿硯箱・蝶蒔絵板文庫
    (まきにすずめまきえらでんすずりばこ・ちょうまきえいたぶんこ)

     永田友治作

     製作年代 :
     江戸時代中期 18C

     法量 :
    硯箱
    縦244mm横145mm高43mm

    板文庫
    縦264mm横208mm厚10mm

     鑑賞 :
    板文庫と呼ばれる料紙を束ねて載せる板と硯箱のセットです。
    硯箱には永田友治作「槙鹿蒔絵料紙箱・硯箱」(京都国立博物館蔵)に似た槙が、 板文庫には友治の作品に多く見られる蝶文が大きく表されています。
     飲食具が多いこの工人としては数少ない文房具であり、在銘で共箱・畳紙も附属した資料性も高い作品です。 槙雀蒔絵螺鈿硯箱・蝶蒔絵板文庫、

     意匠 :
    ・硯箱には永田友治が得意とする槙が描かれています。 蓋裏には、表の槙が連続し、さらにデフォルメしたユーモラスな雀が描かれています。
    ・板文庫には様々な姿の蝶5頭が描かれています。

    槙雀蒔絵螺鈿硯箱・蝶蒔絵板文庫、  形状 :
    ・硯箱は長方形桟蓋造で、蓋甲に面を取っています。 下水板には、縦長の硯石と円形の水滴を納めています。
    ・板文庫は長方形で、両端中央に紐孔を設け、底には紐を通すための溝が切られています。

     技法 : ・硯箱は長方形桟蓋造で、総体錫梨子地で、友治上により土坡を高く盛り上げ、 高蒔絵と螺鈿で槙を表しています。
    ・見返しと見込みは置平目地に高蒔絵と螺鈿で槙に雀が表されています。
    ・板文庫は置平目地に、友治上げによる高蒔絵、青漆、絵梨子地、鉛板、螺鈿など様々な技法を用いて、 5頭の蝶を表しています。紐金具は銀製です。
    ・裏は、淡梨子地に、「方祝」印を表しています。

    槙雀蒔絵螺鈿硯箱・蝶蒔絵板文庫 槙雀蒔絵螺鈿硯箱・蝶蒔絵板文庫  作銘 :
    板文庫の底部左下に青漆を塗りつぶし、方祝の円形印があります。 印部分も友治上げの高蒔絵です。

     外箱 :
    桐製桟蓋造の桐箱で、 蓋表に「東山殿/板文庫」と墨書があります。 友治の同形状の板文庫には、同様の箱書をしたものが他に2例ありますので、 この形式を東山御物に由来するものと考えていたようです。 蓋見返しには「青々子/永田友治」の墨書に「友治」の白文方形朱印があります。 箱には青々子(友治)の印が押された畳紙が附属しています。

    槙雀蒔絵螺鈿硯箱・蝶蒔絵板文庫 槙雀蒔絵螺鈿硯箱・蝶蒔絵板文庫  附属品 :
    道具商の市場での落ち札が附属しています。 落ち札から、京都の有名な道具商・林新助が札元となった売立のようです。 第九とあり、通常は売立目録は書画から始まることから、 売立目録など作られなかった小規模な競売りであったと考えられます。 落札したのは「今貞」とあるので、同じく京都の道具商・今井貞次郎のようです。 大正から昭和初年のことでしょう。当時63円だったようです。

     類品 :
    蝶の配置が異なる同趣の板文庫で、同じ箱に納められ、硯箱が失われたものが現存しています。 またほぼ同意匠の硯箱のみというものも現存していますので、同様なものが数組作られた可能性があります。 槙雀蒔絵螺鈿硯箱・蝶蒔絵板文庫

     伝来 :
    国内に伝来し、2013年に京都で出現しました。

     展観履歴 :
    2019 MIHO MUSEUM「謎の蒔絵師 永田友治」展
    2022 国立能楽堂資料展示室「秋の風 能楽と日本美術」展



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    桐蒔絵硯蓋
     (きりまきえすずりぶた)

     永田友治作

     製作年代 :
     江戸時代中期
     18C

     法量 :
    縦257mm×横257mm×高47mm

     鑑賞 :
    食べ物などを盛る硯蓋です。 青漆刷毛目塗地に、桐を鉛象嵌、螺鈿色漆で表しています。 琳派を慕った永田友治の画風と、 友治独自の作風が顕著に表れた作品です。 全体

     意匠 :
    2つの桐花を大きく配しています。上に釣鐘状の桐花、下に花が咲いた桐花としています。

     技法 :
    ・底以外の総体を青漆の刷毛目塗にしています。底は潤漆の刷毛目塗です。
    ・上の桐花は、線描きは錫粉の高上げです。いわゆる友治上げです。 花は絵梨子地、黄漆、青漆、 朱漆、蕾の輪郭は金粉の付描きで表しています。
    下の桐花は葉も花も鉛板で、花のいくつかは夜光貝を象嵌しています。
    ・口縁は錫粉蒔絵になっています。

     外箱 :
    桟蓋造の桐箱で、蓋表に「桐画刷毛目塗/硯蓋」と表書きあります。 蓋裏の左下に「青々子」と行書で墨書があります。行書の箱書きは珍しいものです。 その下には「友治」の白文方形印があります。小さ目のこの印は、盃等の箱書にしばしば見られます。

     たとう :
    紙のたとうが附属しています。たとうには「青々子」と隷書の黒印と、 「方祝」の朱文円形印があります。 共にスタンプです。『漆器図録』に掲載されている「燕子花蒔絵螺鈿盃盤」や他の作品にも 同様なたとうが附属しています。

     伝来 :
    国内に伝来し、2004年に京都で出現しました。

     展観履歴 :
    2019 MIHO MUSEUM「謎の蒔絵師 永田友治」展




    たとう 箱銘


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     永田 小兵衛 (ながた こへえ) 生没年未詳

    朱漆塗茶器

    朱漆塗茶器
    (しゅうるしぬりちゃき)

     永田小兵衛作

     製作年代 :
    江戸時代中期
    寛延3年(1750)

     法量 :
    直径67mm×高73mm

     鑑賞 :
    朱漆塗茶器 箱書に「唐物写 茶桶」とある菊花型蓋の茶器です。 寛延3年(1750)の箱書があり、年紀がある永田友治唯一の作品です。 永田友治とその後継・小兵衛を考えるうえで、極めて重要な作品です。

     形状 :
    挽物の台付の茶桶で、蓋は菊花型です。高台は同心円状に挽いています。

    朱漆塗茶器  技法 :
    ・挽物の茶器に黒漆を塗り、内側と高台内以外を洗朱塗の塗立としています。

     外箱 :
    桟蓋造の桐箱で、蓋表に「唐物写 茶桶」と表書きがあります。 蓋裏に「此茶器者元来/山中道億老所持/写シヲ有馬角坊/ 亮菅ニ送ルヲ于時/寛延三庚午ノ年九月/所望為冩」と墨書があります。 山中(鴻池)道億(1655〜1736)は大坂の鴻池家の一族で、茶道に通じ、 茶器鑑定に長じて近衛家熙に厚遇されました。 有馬角坊は有馬温泉の宿坊のようです。 底部に「御蒔絵塗師/永田友治」の墨書と「友治」の白文方形黒印があります。

    朱漆塗茶器 朱漆塗茶器  伝来 :
    国内に伝来し2019年に国内で出現しました。

     展観履歴 :
    2019 MIHO MUSEUM「謎の蒔絵師 永田友治」展


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    2011年 1月15日UP
    2019年11月16日更新