山田 常嘉(やまだ じょうか)
流派: 山田派
家系:
山田常嘉は江戸初期に徳川将軍家が京都から召出した印籠蒔絵師です。
代々「御印籠師」・「御差御鞘蒔絵
師」として幕末まで続きました。
つまり徳川将軍家の御用印籠蒔絵師であり、
将軍家御用の刀剣の鞘塗蒔絵師でもあります。無足で俸禄はありませんが、武士に准ずる身分で、
年始・五節句・八朔に御目見を許され、旅行の際には帯刀することもできます。
格式の高い、将軍家佩刀の拵や、天皇家へ進献の太刀鞘の塗蒔絵御用の後には、
江戸城「焼火之間」において、成功報酬として老中から御褒美金も下賜されました。
武鑑:
武鑑は大名・旗本・幕府役人の氏名・禄高・系図・家紋・屋敷所在地・重臣の氏名といった情報を記し、
民間の書肆が営利目的に刊行していた本です。実は武鑑には御用達町人も出ているのです。
宝暦12年(1762)刊行の「宝暦武鑑」を例に見てみましょう。
「▲御蒔絵師并塗師」のところを見れば「十人ふち/皆川丁二丁め/□幸阿弥因幡」を筆頭に栗本駿河・菱田丹波・太田播磨・・・と続きます。
その後の「▲御印籠師」のところには、「南ぬし丁/∧山田常嘉」とあります。
□印は御細工所御用、∧印は御腰物方御用を表わしています。
山田常嘉ははじめ小納戸御用を務めていましたが、
寛保元年(1741)から腰物方支配となっているので、まさにそれを表しています。
各代略歴:
・山田 常嘉 初代?〜1710
山城国京都出身で、4代将軍徳川家綱によって江戸に召し出され、天和3年(1683)、
幸阿弥長房と共に小納戸御用・御好御用を勤めました。
元禄3年(1690)病身により隠退し、宝永7年(1710)に病没しました。
・山田 常嘉 2代1680〜1749
2代は初代常嘉に男子がなかったため養子です。
延宝8年(1680)に生まれ、元禄3年(1690)に11歳で相続し、宝永7年(1710)に初御目見しました。
寛保元年(1741)に腰物奉行支配となりました。寛延2年(1749)に没しました。
・山田 常嘉 3代?〜1798
2代の実子で延享3年(1746)に部屋住で御目見し、寛延2年(1749)に相続しました。
寛政10年(1798)に没しました。
・山田 常嘉 4代?〜1816
常次郎。3代に男子がなく、寛政10年(1798)に婿養子となり、
将軍家御差御用を勤め、相続を許されました。文化13年(1816)に隠居し同年に没しました。
・山田 常嘉 5代?〜1818
新五郎。4代に男子がなく、文化12年(1815)に養子となり翌年4代の病死により相続しました。
文化14年(1817)に隠居し、文政元年(1818)に病死しました。
・山田 常嘉 6代?〜1849
英次郎。5代に男子がなく文化14年(1817)に養子となり、同年相続しました。
文政4年(1821)に御目見しました。嘉永元年(1848)病身により隠居。同2年(1849)に没しました。
・山田 常嘉 7代1811〜?
文化8年(1811)印籠蒔絵師・笛木了甫の子に生まれ、岩三郎と称しました。
実父に蒔絵を学び、天保10年(1839)笛木家を相続しました。
6代に男子がなく、嘉永元年(1848)に山田家の養子となって相続しました。
嘉永4年(1851)、病気につき隠居しました。
維新後は東京・赤城下町67番地に住んで
印籠・鞘・小箪笥・香箱・手袋入・名刺入などを製作しています。
晩年は常翁とも号しました。
・山田 常嘉 8代
天保6年(1835)に生まれました。実祖父は孝吉、実父は和吉なる者で、幸之丞と称しました。
7代常嘉斎に男子がなかったため、嘉永4年(1851)に養子となって相続、
安政5年(1858)に御目見しました。文久2年(1862)、和宮降嫁につき、
徳川将軍家から孝明天皇への進献御太刀御用を勤め、翌年、将軍家茂の上洛に際し、
将軍家から孝明天皇に献じた秀光の太刀に新調の「菊桐紋蒔絵糸巻太刀拵」
(東京国立博物館蔵)の鞘に蒔絵をしました。
慶應元年(1865)、第2次長州征伐の際には、14代将軍徳川家茂に
供奉して大坂へ行き、現地で将軍家茂の大小拵、小脇差拵を調進しました。
8代で明治維新を迎えました。
住居:
2代常嘉(1680〜1749)が元文元年(1736)、日本橋平松町に坪数130坪の町屋敷を拝領し、
明治維新まで続きました。
武鑑では2代常嘉までは本材木町、その後、幕末まで南塗師町と書かれています。
拝領町屋敷は、幕府御用達職人が、安定した収入により幕府御用を勤められるよう
下賜されるものだったので、おそらく日本橋平松町の拝領地は貸家にして、
南塗師町に住んだと考えられます。
作品を所蔵する国内の美術館・博物館:
山田 常嘉 3代
・東京国立博物館(糸巻蒔絵印籠
)
・国立歴史民俗博物館(雲龍蒔絵龍笛箱)
山田 常嘉 4代
・国立歴史民俗博物館(梅蒔絵笛筒)
・永青文庫(牛蒔絵印籠)
・上田市立博物館(萩蒔絵印籠)
・静嘉堂文庫美術館(七福神留守蒔絵印籠)
山田 常嘉 6代
・静嘉堂文庫美術館(柴舟蒔絵印籠・獅子蒔絵沈金印籠)
・東京富士美術館(葡萄蒔絵印籠・比翼鳥蒔絵印籠)
・彦根城博物館(蝶蒔絵笛筒)
山田 常嘉 7代
・大阪市立美術館(楽器蒔絵印籠)
山田 常嘉 8代
・東京国立博物館(
菊桐紋蒔絵糸巻太刀拵
)
・東京富士美術館(牡丹蝶蒔絵印籠)
・大阪市立美術館(諫鼓鶏蒔絵印籠・富士蒔絵小柄)
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2007年10月15日UP
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2017年 4月 1日更新
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